苦労の先に養われる「真実を見抜く力」。熊本大学薬学部の学部長に聞いた、大学院で学ぶ意義とは。
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薬学的思考力と倫理観を備えた、創造性豊かな人材育成を目指す熊本大学薬学部。
今回は社会人薬剤師が大学院で学ぶ意義について、熊本大学薬学部の学部長 甲斐広文さんにお話を伺いました。
甲斐広文(かいひろふみ)さん
▼ご経歴
エーザイ(株)研究員 (昭和60年4月)
熊本大学助手(薬学部) (昭和62年4月)
在外研究員(米国UCSF)( 平成 4年7月〜平成6年4月末)
熊本大学助教授(薬学部)(平成 9年6月)
熊本大学教授(薬学部)(平成13年4月〜)
熊本大学大学院薬学教育部長、薬学部長(平成27年4月〜)
▼お仕事内容
薬学教育部長・薬学部長を務める傍ら、遺伝性難病などの創薬研究に携わる。
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この記事に書いてあること
1.社会に出てから研究を重ねる難しさ
ー現役で薬剤師として働いている方ですと、仕事と学びの両立が難しそうですね
その通りです。職場から理解を得られない、仕事が夜遅くまで終わらず講義が受けられない等、大学院に通うハードルが高いのは事実です。
さらに博士号取得のためには最終的に英語の論文作成や学会発表などもあるので、社会人にとって精神的・肉体的にかなりハードだといえるでしょう。
そこで本学ではさまざまな融通を利かせた対応をしています。日常的な業務内容を大学院講義の一環とする実践臨床薬学実習等や昼夜開講制、社会人の環境に応じた単位取得システムの提供などですね。
2.博士号の獲得がもたらす新たな薬剤師の価値
ー博士号の取得は薬剤師にどんなメリットがありますか?
キャリア形成に大きな意味・価値をもたらすと思います。
取得を目指す理由は十人十色で、単純な知的探求心や好奇心のためや、薬剤師業務の向上や職務上で必要になったという方もいれば、転職の都合上有利だからという方もいらっしゃいます。
なかには病院の薬剤部長を務めながら5~6年かけて博士号を取得し、実務経験がある教員として、薬学部の教授に就任した方もいらっしゃいます。
また保険薬局の経営者が50歳を過ぎてから博士号の取得を目指し、夜間や土日を使って6~7年かけて取得されました。その方は卒業後、博士号をお持ちの薬局経営者という貴重な存在として県薬剤師会や学会の理事等の重要な役職で活躍されています。
現場をよく知る薬剤師でありながら、学術的な面の知識も評価されることで、結果として色々な活動がしやすくなるメリットはあると思います。
ー薬剤師としての「箔」がつく、ということですね…!
そうですね。
博士号を持っていると、病院や学会において医師が敬意を払ってくれることも多いです。実際に「対等な立場で意見交換や議論ができるようになった」という声も耳にしています。
これは他大学の話ですが、薬剤師の方が博士号を取得した後、大学教授に挑戦する機会を得たケースもあったようです。キャリアの選択肢が広がるのは間違いありません。
3.「社会人だから」という妥協は一切しない
ー仕事と学業の両立というのは、かなり厳しい道ですよね
そうですね。個人的な意見ですが、博士号を取るのが大事なのではなく、取得の過程でどのくらい苦労してどれくらい実力をつけたかが大事だと考えています。かたちばかりの博士号は、すぐに実力を見透かされてしまうでしょう。
本学の場合は、研究に関する十分な指導は行われますが、社会人だとしても時間をかけて自身の努力で卒業してもらいます。学位論文の内容やプレゼンも、研究室ごとではなく学部全体の基準で厳しく精査しますので、特に社会人は仕事との両立が大変かもしれません。
しかし苦労を重ねて取得したからこそ、卒業後に現場で活躍できる力がつきます。
高い基準で学生に接することは大学人としての社会的使命だと思います。熊本大学出身の薬剤師が誇りを持てるよう、人材育成には力を入れています。
4.みずから手を動かし、実のある経験を積むことで得られる「真実を見抜く力」
ー社会人薬剤師が大学院で学ぶ意義はどんな点にあるのでしょうか
主体的に研究を重ねられる点にあると思います。1+1が2ではなく、3にも4にもなるのが研究です。ひとつとして同じ結果がないのも醍醐味ともいえます。
新しい研究であればあるほど壁は分厚く、超えるのは大変ですが、こういった経験を大学院で積むのは何よりも貴重な経験になるでしょう。
講義や実習ではなく、自分の手を動かし、悩み苦しみながら汗をかく。これが薬剤師として現場に戻った時に活きてくると思います。
論文の読み方ひとつにおいても、たとえば内容の再現性を見抜けるかどうかは大きな差になり得ます。苦労して手を動かし壁を乗り越えた経験をもとに「真実を見抜く力」を身につけられるのが、大学院という場なのではないでしょうか。
ー最後に、大学院への進学を志す薬剤師にメッセージをお願いします
真実を見抜ける真の薬剤師になってほしいと思います。
博士号取得の道は長くけわしいものですが、やり遂げた先に必ず大きな価値が生まれます。
専門資格の取得に役立ったり、キャリアの選択肢が広がったりと、可能性は無限です。
真の薬剤師を志す方は、ぜひチャレンジしてみてください。
※この記事は弊社別メディア「HOP!ナビ薬剤師」からの転載です。
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